宮吉硝子の挑戦
国立 大介
事業開発部 本部長 『アーバンeco』シリーズ プロジェクトディレクターとして意匠設計全般を主導。「『アーバンeco』シリーズの開発は、ガラス商社として事業展開をしてきた宮吉硝子の歴史の中で、初めての挑戦。当初、社内からは反対の声もあがりましたが、そういった声があったからこそ、安全性・品質を追求できました」。
明るく、美しく、街並みを変える。
一体型ガラス製手すりを開発
提供価値と意義商社の枠を超えて、新製品の開発に挑む
ガラスの専門商社でありながら、製品開発を手掛けるメーカーとしての顔を持つ宮吉硝子。2004年にスタートした「一体型ガラス製手すり」の開発は、当社を代表する製品開発プロジェクトの一つ。その発端となったのが、大手ディベロッパーのマンション建設を手掛ける施工会社からの「アルミ手すりとガラスが一体となった『一体型ガラス手すり』をつくってほしい」という依頼だった。それまでも「ガラス手すり」と言われる製品は存在したが、それらは手すりメーカーが手掛けた手すりに、後からガラスをはめ込むという、別々の製品を組み合わせたものであった。従来型のガラス手すりとは一線を画す、「一体型ガラス手すり」をゼロベースから生み出すため、宮吉硝子の挑戦がスタートした。
チャレンジ従来型製品とは一線を画す価値を生み出し、複数のディベロッパーで採用
手すりとガラス、もともと別々の製品を一体化させるためには、手すりメーカーと協力して一つの製品をつくりこんでいく必要がありました。そこで、タッグを組んだのがビル・マンション用のアルミ製手すりの開発において豊富な実績とノウハウを持つビニフレーム工業です。開発をスタートして、プロトタイプに行き着くまでに約半年。知的財産の確認、ネーミングの決定を経て、約1年後の2005年に一体型ガラス手すり「アーバンecoライト」がリリースとなりました。
「アーバンecoライト」の最大の特徴は「構造シール」と言って、接着力が非常に高いシーリング材を用いてアルミ素材とガラスを接着し、ガラスを支持する硬枠を見せない、フレームレスのような開放的でスタイリッシュなデザインを可能にしたこと。一般のガラス手すりは4辺を金属フレームで固定したものを連結させる構造になっていますが、「アーバンecoライト」はガラスの上下だけのフレームで、4辺を固定したときと同等の高い耐風圧性と免振機構を実現しています。また、ガラス手すりには本来、強化ガラスを使うのが一般的ですが、構造シールを用いることでフロート板ガラスの使用が可能になったことも大きなメリットに。軽量化に加え、強化ガラスでは実現できなかったスタイリッシュな外観で、街並みを鮮やかに映し出す反射映像の美しさを叶えています。
そしてもう一つの特徴が、施工性の高さ。従来品は施工後に万が一ガラスが破損した場合、マンションの外側からゴンドラを使った高所作業が必要となり、高額な費用負担が発生することが課題となっていました。「アーバンecoライト」ではベランダ側からガラス交換ができ、内側から施工すれば完結する仕組みを実現。当社はこの仕組みの開発で特許を取得しています。
製品完成後は、複数のディベロッパーで採用され、業績としても数億円規模のインパクトを打ち出すことができました。特に九州のディベロッパーでは、発売以降すべての新規物件で採用いただき、宮吉硝子の製品が業界から認められたことを実感しました。その後、他のメーカーから類似した製品が販売されていますが、現時点でも完全な一体型の製品は出てきていません。
成果マンション市場から、戸建住宅市場へ。新たなプロジェクトが始動。
「アーバンecoライト」のリリースから6年後の2011年、第二弾となる「アーバンeco
Gstyle」の開発に着手しました。追求したのは、都会的なスタイリッシュなデザイン。上下のフレームの厚さを「アーバンecoライト」の1/3にすることでフレームが表に出ない、より意匠性の高いデザインを実現。2012年度のグッドデザインアワードを受賞しています。
そして、さらなる飛躍のきっかけとなったのが、建材の展示会への出展でした。「アーバンeco
Gstyle」が大手ハウスメーカーの目に留まり、戸建住宅用のガラス製手すりの開発プロジェクトがスタートします。しかし、戸建住宅用へのモデルチェンジは決して容易ではなく、デザインや仕様、強度や耐久性、安全性、コスト、物流のスキーム、施工方法など解決すべき課題は山積みでした。さらにお客様の工場へ直接納入するための物流体制も整備。その他、独自の施工マニュアルによる現場作業の効率化、住宅展示場でのユーザー評価確認などを経て、2015年に製品化にこぎつけました。
おかげさまで、完成した戸建住宅用のガラス製手すりは、発売開始から現在に至るまで、売上・出荷台数ともに右肩上がりを続けています。中でも心に残っているのが、リリースから約1年、全国放送のテレビCMで当社のガラス手すりを含めたバルコニー空間を象徴的に映していただいたこと。それだけお客様にとっても価値のある製品だったのだと嬉しく思います。
展望ファブレスメーカーとして、自社ブランド製品を、世の中へ送り出したい。
今、マンション業界ではガラス製手すりがちょっとしたブームということもあり、再びマンション用の製品開発に着手しています。今回も「アーバンeco」シリーズを共に手掛けたビニフレーム工業との共同開発。現在はプロトタイプを開発中で、2024年には立体的な仕様の製品を開発予定。今回もグッドデザインアワードに応募して、100位以内の入賞を目指します。
今後の展望としては、ファブレスメーカーとして、建築業界の皆さまに「採用したい」と思っていただけるような自社ブランド製品を生み出し、社会へ新たな価値をお届けすること。私たちの挑戦が業界の新たなニーズの起爆剤になればと考えています。